• 「木」語り 連載第8回

    第二章:世界の森林分布

    7:広葉樹林帯の特性

     「広葉樹林帯」に関しては前述のごとく、落葉広葉樹林帯、硬葉樹林帯、照葉樹林帯、熱帯雨林帯等に大別できます。ただし、「針葉樹」と「広葉樹」が入り混じった混成の樹林帯も、温帯エリア主体に存在しています。いずれにせよ「針葉樹林帯」と比較すると、樹種も多く、多様性に富んでいる事が分かります。その一方で、「針葉樹林帯」の「タイガ」のように集約されたものは、「熱帯雨林」に限定され、全体像を単純にとらえる事はかなり困難な状況下にあります。従って、本コーナーでは「熱帯雨林」に限定し検証して行く事にします。

    <「熱帯雨林」の現状と変化>

     「熱帯雨林」とは文字通り、熱帯エリアに広がる「常緑広葉樹」主体の樹林帯の事です。ただ、同じ熱帯でも乾燥地帯では成立せず、年間降水量が2,000㎜以上の高温多雨地区だけに形成されています。

     具体的には、熱帯エリアの中南米・アジア・アフリカの一部に集約して存在(「熱帯雨林」の分布図参照)しており、様々な樹林帯の中でも、CO2の吸収力に特に優れた能力を持ち、酸素の約40%がここで供給されていると言われています。従って、「熱帯雨林」をどう維持して行くかが、地球温暖化問題の極めて重要課題となっている事は周知の通りです。

     その一方で、「熱帯雨林」が存在するエリアの国の大部分が発展途上国であり、様々な協定が結ばれ、維持・管理の強化努力が行われているにもかかわらず、依然として減少・荒廃が続いており、さらなる対策が求められている事もまた偽らざる事実となっています。

     具体的な「熱帯雨林」の荒廃・消失スピードは、毎秒0.5~0.8haにも達するとの研究もあり、良く起点として取り上げられる1,950年~現在(2,020年~2,023年頃)の状況を比較すると、それ以前は世界の陸地面積の約14%(約21億ha)が「熱帯雨林」で占められていたとの事ですが、現在ではその半分以下の約6%(約9億ha・全森林面積の22~23%)にまで減少しています。

     となれば「熱帯雨林」でのCO2吸収≒酸素供給量も、1,950年頃と比較すると半減していると言う事になり、地球温暖化問題の最重要課題の一つとなっている事は火を見るよりも明らかだと言えるでしょう。

     では「熱帯雨林」の消失要因とは。木材利用のための伐採・パーム椰子生産や焼き畑に代表される農地への転換・それに近年では地球温暖化の影響を受けた大規模火災などがその代表的なもの。

     いずれにせよ「熱帯雨林」が消失した熱帯エリアでは、急速に乾燥化が進み、サバンナのような草原地帯どころか、砂漠化する事も珍しくありません。

    それでは、「熱帯雨林」消失例として、南米アマゾン川流域の状況を以下で提示しておきます。

    世界の「熱帯雨林」分布図

    東南アジアの「熱帯雨林」(マレーシア)

  • 「木」語り 連載第7回

    第二章:世界の森林分布

    6:針葉樹林帯の特性

     前述のごとく世界の樹林帯を見ると、寒冷地域(主に亜寒帯。酷寒の寒帯地域には樹木は育たない)に広がる「針葉樹林帯」と、比較的暖かい地域(温帯~熱帯)に広がる「広葉樹林帯」に大別されます。そこで両者の性格・状況等について纏めておきます。まずは「針葉樹林帯」から・・・

     「針葉樹林帯」の大多数は亜寒帯と呼ばれる冷涼な地域に存在します。しかも大陸分布の影響で殆どが北半球に偏在(南半球には亜寒帯の陸地が殆ど無い)しています。加えて、北半球の中でもヨーロッパ(ロシア西部を含む)+同地域に続くアジア(≒ユーラシア大陸)と、北米大陸北部に集中しています。逆に言えば、「針葉樹」は「針葉樹林帯」以外のエリアも存在はするが、そのウエイトはごくわずかだと言う事。また、亜寒帯的な気候は世界の高地にも点在しており、「針葉樹」分布比率の全てをトータルで把握するのは至難の業。

    従ってこのコーナーではユーラシア大陸北部と北米大陸北部に限定しその状況を確認しておきます。

    上記2大陸部の「針葉樹林帯」の事を「タイガ」と呼びます(従来は「ユーラシア大陸」部分を「タイガ」と呼んでいたが、近年は「北米大陸」も含めた全域に使用)。その面積は約7億ha。つまり地球の全森林面積の17~18%を占めていると言う次第。しかも、1,960年代では約6.6億haであったものが、1,990年代には7.6億haと増加傾向にあります。

    この数値だけを見ると、「タイガ」エリアの森林事情は好転しているように感じます。ただ、近年の研究では<面積は増えているが、二酸化炭素吸収量はダウンしている>との事。理由は、森林自体が殆ど放置状態で、老木が増え同吸収能力自体落ちているため。従って、計画伐採・計画植林地域を増やす必要があると言う事になります。しかし、「タイガ」の分布エリアを見る限り至難の業と言わざるを得ません。

    ただ、カナダや一部のヨーロッパエリアでは、そのための取り組みも少しずつ活発化しています。

     また、両「タイガ」エリアとは別に、日本を含め「針葉樹林帯」の植林は(「針葉樹」「広葉樹」混成樹林帯を含む)世界各国での取り組みも始まっており、その活動に夢を託したいものです。

    北米大陸とユーラシア大陸に広がる「タイガ」

  • 「木」語り 連載第6回

    「木」語り・第二章では、世界の森林分布状況とその変化について検証します。それを知る事が環境問題に取り組むための必須条件となるからです。

    5:森林分布の概要

    世界を大まかに分類すると、約3分の1が陸地で3分の2が海です。そして、陸地の約27%程度が森林で占められています。海を含めた地球の全面積からすると1割弱が森林と言う事になります。

    では陸地の27%とは? おおよそ40億ha(ヘクタール)。

    これを大まかに地域別に分けると、ヨーロッパが約10億haと最大(ロシア西部を含む)。続いては、南米が8.3~8.4億haで2位・北米+中米が7億ha強で3位となります。

    ただ地域別の森林比率となると少し状況は異なり、50%強を占める南米が最も高くなります。つまり<南米は世界で最も緑が多い大陸>と言えるでしょう。2位はヨーロッパ(ロシア西部を含む)で45~46%。3位は北米+中米で25~26%。つまり、南米とヨーロッパは全面積の半分or 半分弱を森林が占めているが、他の大陸ではその比率が大幅に減ると言う事。

    以上のデータを見ると、世界規模では南米とヨーロッパの森林をどう守るかがその保護の最大に課題となっている事が分かります。勿論この2地域だけに任せるのではなく、他の地域でも可能な限りでそれぞれの森林保全&正しい開拓に取り組む必要がある事は言うまでもありませんが・・・

    なお、人類が農耕生活を始める前(1,500~2,000年前)には世界の森林面積は約60億haあったと言う研究もあります。つまり、この間に人間の手により地球の森林は20億ha減少したと言う事。しかもその減少スピードは良く知られている通り、近年加速度的に早くなっています。具体的にはその加速度の起点となったのが1,950年で、20億ha減の大半が最近50~60年の間。生活の利便性だけを優先し、如何により大きなものを我々が失ったか、改めて知り自問する必要があるでしょう。

    もう少し具体的に近年(50~60年間)の森林減少の原因を探ると、農業用地への転用・気温の上昇(温暖化)に伴う砂漠化の進行・酸性雨による被害。以上が3大要因だとされています。

    ただ、今から10年ほど前の2,000~2,010年の10年間では、世界で植林活動や自然林の管理活動が活発化したため、年220万haが増加しており、減少分と差し引きすると約-520万haとなるとの事。これを1,990年代と比較すると、当時の年間森林減少量は1,600~1,300haとされており、大幅に鈍化しています。現状維持~トータルでの増加を目標とすると、まだまだ道半ばではありますが、年間減少量は大幅に減り<努力すれば道は開ける>と言う、明るいデータも見られると言う事。

    なお、最新の世界の森林面積は、国土交通省のデータによると、1,990年・約42億2,364万ha・2,000年約約41億1,580万ha(減少率0.19%)・2,010年約41億0,631万ha(減少率0.13%)・2,020年40億0,059万ha(0.12%)となっており、減少率は鈍化しているがマイナス状態が続いている事に変わりはありません。

    世界の森林面積の年当たりの変化率(2000-2005年)

    <画像提供先URL> 図―1

    世界の森林分布・面積:1.日本の森・世界の森:森学ベーシック|私の森.jp 〜森と暮らしと心をつなぐ〜 (watashinomori.jp)