• 「木」語り 連載第9回

    第二章:世界の森林分布

    *アマゾン川流域の「熱帯雨林」とその変遷。

    アマゾン川とその流域面積は5.5億haに達しかつてはその殆どが「熱帯雨林」でした。その規模は勿論世界最大。しかし、毎年全面積の0.3~0.4%が消失しています。また、過去にはあまり考えられなかった、大規模火災による焼失も加わり、2,019年の火災ではなんと11%が一気に燃えてしまいました。また過去には殆ど無かった<木の大量枯死>と言った現象も見られるようになっています。明確な研究結果は出ていませんが、地球温暖化による気候変化が何らかの影響を及ぼしている。そう見るのが妥当でしょう。

     なおアマゾンの「熱帯雨林」焼失に関しては、下記のようなデータが公開されています。

    *アマゾンの「熱帯雨林」面積

    〇1,970年・・・約4億ha

    〇1,990年・・・約3億8,000万ha

    〇2,000年・・・約3億6,000万ha

    〇2,010年・・・約3億4,300万ha

    〇2,015年・・・約3億4,100万ha

    〇2,018年・・・約3億3,900万ha

     以上です。

     つまり、1,970~2,018年の50年間弱で6,000万ha・約15%が消失してしまった事になります。しかも、上記データには2,019年の大火災が含まれておらず、このままではアマゾンの「熱帯雨林」が完全に消えてしまう可能性さえあると言わざるを得ません。

     その一方で、同じ中南米エリアの「熱帯雨林」でも、中米の「コスタリカ」では一度農業用などに破壊したエリアを人の手を入れ自然に戻すなどの試みが一定の成功を修め、<観光収入等が増えたことにより、国の経済力・国民の収入アップに繋がった>と言った話も伝わってきています。

     また、同じ「熱帯雨林」を農地に変えるにしても、一定の森林スペースを残しながら人と自然が共存できる開発システムも少しずつ取り入れられるようになっており、まだ微力と言わざるを得ませんが、明日に向けた明るい話題も出てきています。

     既に提示した通り、「熱帯雨林」は中・南米以外では、アジアの熱帯多雨エリア、アフリカ中・西部のわずかに残された多雨エリアなどにも広がっています。ただ、多少の状況差はあれいずれも危機的状況にある事に変わりはありません。加えて、<日本を含む先進国もその破壊に手を貸している>との言う事実をもっと直視する必要があります。

     具体的には、「熱帯雨林」産出木材の無分別な大量使用・油椰子プランテーションへの加担・・・等々。

     ただこれまで破壊に加担してきた事で「熱帯雨林」を持つ国々と一定のパイプが出来ている事もまた事実。そしてこの事実を逆に活かし、率先して保護活動に協力して行く。その中には、他人事では無く、日本国民一人一人の行動も深く関係している。その自覚を持たなければなりません。

    アマゾン川流域の「熱帯雨林」

    アフリカの「熱帯雨林」

  • 「木」語り 連載第8回

    第二章:世界の森林分布

    7:広葉樹林帯の特性

     「広葉樹林帯」に関しては前述のごとく、落葉広葉樹林帯、硬葉樹林帯、照葉樹林帯、熱帯雨林帯等に大別できます。ただし、「針葉樹」と「広葉樹」が入り混じった混成の樹林帯も、温帯エリア主体に存在しています。いずれにせよ「針葉樹林帯」と比較すると、樹種も多く、多様性に富んでいる事が分かります。その一方で、「針葉樹林帯」の「タイガ」のように集約されたものは、「熱帯雨林」に限定され、全体像を単純にとらえる事はかなり困難な状況下にあります。従って、本コーナーでは「熱帯雨林」に限定し検証して行く事にします。

    <「熱帯雨林」の現状と変化>

     「熱帯雨林」とは文字通り、熱帯エリアに広がる「常緑広葉樹」主体の樹林帯の事です。ただ、同じ熱帯でも乾燥地帯では成立せず、年間降水量が2,000㎜以上の高温多雨地区だけに形成されています。

     具体的には、熱帯エリアの中南米・アジア・アフリカの一部に集約して存在(「熱帯雨林」の分布図参照)しており、様々な樹林帯の中でも、CO2の吸収力に特に優れた能力を持ち、酸素の約40%がここで供給されていると言われています。従って、「熱帯雨林」をどう維持して行くかが、地球温暖化問題の極めて重要課題となっている事は周知の通りです。

     その一方で、「熱帯雨林」が存在するエリアの国の大部分が発展途上国であり、様々な協定が結ばれ、維持・管理の強化努力が行われているにもかかわらず、依然として減少・荒廃が続いており、さらなる対策が求められている事もまた偽らざる事実となっています。

     具体的な「熱帯雨林」の荒廃・消失スピードは、毎秒0.5~0.8haにも達するとの研究もあり、良く起点として取り上げられる1,950年~現在(2,020年~2,023年頃)の状況を比較すると、それ以前は世界の陸地面積の約14%(約21億ha)が「熱帯雨林」で占められていたとの事ですが、現在ではその半分以下の約6%(約9億ha・全森林面積の22~23%)にまで減少しています。

     となれば「熱帯雨林」でのCO2吸収≒酸素供給量も、1,950年頃と比較すると半減していると言う事になり、地球温暖化問題の最重要課題の一つとなっている事は火を見るよりも明らかだと言えるでしょう。

     では「熱帯雨林」の消失要因とは。木材利用のための伐採・パーム椰子生産や焼き畑に代表される農地への転換・それに近年では地球温暖化の影響を受けた大規模火災などがその代表的なもの。

     いずれにせよ「熱帯雨林」が消失した熱帯エリアでは、急速に乾燥化が進み、サバンナのような草原地帯どころか、砂漠化する事も珍しくありません。

    それでは、「熱帯雨林」消失例として、南米アマゾン川流域の状況を以下で提示しておきます。

    世界の「熱帯雨林」分布図

    東南アジアの「熱帯雨林」(マレーシア)

  • 「木」語り 連載第7回

    第二章:世界の森林分布

    6:針葉樹林帯の特性

     前述のごとく世界の樹林帯を見ると、寒冷地域(主に亜寒帯。酷寒の寒帯地域には樹木は育たない)に広がる「針葉樹林帯」と、比較的暖かい地域(温帯~熱帯)に広がる「広葉樹林帯」に大別されます。そこで両者の性格・状況等について纏めておきます。まずは「針葉樹林帯」から・・・

     「針葉樹林帯」の大多数は亜寒帯と呼ばれる冷涼な地域に存在します。しかも大陸分布の影響で殆どが北半球に偏在(南半球には亜寒帯の陸地が殆ど無い)しています。加えて、北半球の中でもヨーロッパ(ロシア西部を含む)+同地域に続くアジア(≒ユーラシア大陸)と、北米大陸北部に集中しています。逆に言えば、「針葉樹」は「針葉樹林帯」以外のエリアも存在はするが、そのウエイトはごくわずかだと言う事。また、亜寒帯的な気候は世界の高地にも点在しており、「針葉樹」分布比率の全てをトータルで把握するのは至難の業。

    従ってこのコーナーではユーラシア大陸北部と北米大陸北部に限定しその状況を確認しておきます。

    上記2大陸部の「針葉樹林帯」の事を「タイガ」と呼びます(従来は「ユーラシア大陸」部分を「タイガ」と呼んでいたが、近年は「北米大陸」も含めた全域に使用)。その面積は約7億ha。つまり地球の全森林面積の17~18%を占めていると言う次第。しかも、1,960年代では約6.6億haであったものが、1,990年代には7.6億haと増加傾向にあります。

    この数値だけを見ると、「タイガ」エリアの森林事情は好転しているように感じます。ただ、近年の研究では<面積は増えているが、二酸化炭素吸収量はダウンしている>との事。理由は、森林自体が殆ど放置状態で、老木が増え同吸収能力自体落ちているため。従って、計画伐採・計画植林地域を増やす必要があると言う事になります。しかし、「タイガ」の分布エリアを見る限り至難の業と言わざるを得ません。

    ただ、カナダや一部のヨーロッパエリアでは、そのための取り組みも少しずつ活発化しています。

     また、両「タイガ」エリアとは別に、日本を含め「針葉樹林帯」の植林は(「針葉樹」「広葉樹」混成樹林帯を含む)世界各国での取り組みも始まっており、その活動に夢を託したいものです。

    北米大陸とユーラシア大陸に広がる「タイガ」