• 「木」語り 連載第6回

    「木」語り・第二章では、世界の森林分布状況とその変化について検証します。それを知る事が環境問題に取り組むための必須条件となるからです。

    5:森林分布の概要

    世界を大まかに分類すると、約3分の1が陸地で3分の2が海です。そして、陸地の約27%程度が森林で占められています。海を含めた地球の全面積からすると1割弱が森林と言う事になります。

    では陸地の27%とは? おおよそ40億ha(ヘクタール)。

    これを大まかに地域別に分けると、ヨーロッパが約10億haと最大(ロシア西部を含む)。続いては、南米が8.3~8.4億haで2位・北米+中米が7億ha強で3位となります。

    ただ地域別の森林比率となると少し状況は異なり、50%強を占める南米が最も高くなります。つまり<南米は世界で最も緑が多い大陸>と言えるでしょう。2位はヨーロッパ(ロシア西部を含む)で45~46%。3位は北米+中米で25~26%。つまり、南米とヨーロッパは全面積の半分or 半分弱を森林が占めているが、他の大陸ではその比率が大幅に減ると言う事。

    以上のデータを見ると、世界規模では南米とヨーロッパの森林をどう守るかがその保護の最大に課題となっている事が分かります。勿論この2地域だけに任せるのではなく、他の地域でも可能な限りでそれぞれの森林保全&正しい開拓に取り組む必要がある事は言うまでもありませんが・・・

    なお、人類が農耕生活を始める前(1,500~2,000年前)には世界の森林面積は約60億haあったと言う研究もあります。つまり、この間に人間の手により地球の森林は20億ha減少したと言う事。しかもその減少スピードは良く知られている通り、近年加速度的に早くなっています。具体的にはその加速度の起点となったのが1,950年で、20億ha減の大半が最近50~60年の間。生活の利便性だけを優先し、如何により大きなものを我々が失ったか、改めて知り自問する必要があるでしょう。

    もう少し具体的に近年(50~60年間)の森林減少の原因を探ると、農業用地への転用・気温の上昇(温暖化)に伴う砂漠化の進行・酸性雨による被害。以上が3大要因だとされています。

    ただ、今から10年ほど前の2,000~2,010年の10年間では、世界で植林活動や自然林の管理活動が活発化したため、年220万haが増加しており、減少分と差し引きすると約-520万haとなるとの事。これを1,990年代と比較すると、当時の年間森林減少量は1,600~1,300haとされており、大幅に鈍化しています。現状維持~トータルでの増加を目標とすると、まだまだ道半ばではありますが、年間減少量は大幅に減り<努力すれば道は開ける>と言う、明るいデータも見られると言う事。

    なお、最新の世界の森林面積は、国土交通省のデータによると、1,990年・約42億2,364万ha・2,000年約約41億1,580万ha(減少率0.19%)・2,010年約41億0,631万ha(減少率0.13%)・2,020年40億0,059万ha(0.12%)となっており、減少率は鈍化しているがマイナス状態が続いている事に変わりはありません。

    世界の森林面積の年当たりの変化率(2000-2005年)

    <画像提供先URL> 図―1

    世界の森林分布・面積:1.日本の森・世界の森:森学ベーシック|私の森.jp 〜森と暮らしと心をつなぐ〜 (watashinomori.jp)

  • 「木」語り 連載第5回

    第一章:「木」ってなんだ?

    4:「広葉樹」とは?

    「広葉樹」とは言うまでも無く、幅の広い葉を持った樹木の総称。分類的には「被子植物」でありかつ「双子葉植物」がその対象となります。

    「被子植物」が地上に表れたのは1億年ほど前とされており、裸子植物・セコイアなどの針葉樹よりは後と言う事になります。また、裸子植物・針葉樹にも雌花と雄花があり、雌花が雄花で作られて花粉を受粉すると言う交配方法は同じですが、風が雄花で大量に作られた花粉を雌花に運ぶと言う形態。従って、極めて効率が悪い方法と言えます。

    一方、「被子植物」は我々が良く知る<目立つ花>を咲かせ、その花の魅力で昆虫などを引き寄せ、体に着いた花粉を雄花~雌花へと運ぶことで交配を行うと言う、全く別の方式を確立しました。そして、この被子植物のおそらく多年草の中から、幹(茎)を巨大化させるものが現れ、それが広葉樹となったと言う次第。

    従って「針葉樹」と「広葉樹」では、かなり古い段階で進化の過程が分かれ、別の経路で樹木となった。そう考えるべきでしょう。

    ただしもう少し時代を遡ると、雄花が作る花粉を雌花が受け交配が行われ種子を作り、それが発芽すると言うシステムは同じ。また「維管束」と言う基本構造も同じ。従って、「針葉樹」「広葉樹」共に近い形での巨大化に成功したと言う次第です。結果としてとして<巨大化したものは年輪を構成する事により年々成長する>と言う形態にも大きな違いはありません。

    しかしもう少し深く踏み込むと、「針葉樹」と「広葉樹」では木材として見た場合には、かなり性格が異なります。ただこの件の詳細に関しては、木材の特性に関するコーナーに譲る事にします。それよりも重要な「針葉樹」と「広葉樹」の違いは、樹種の多少にあります。前項でも触れた通り、現在8,000種強の樹種が知られています。ただしこのうち針葉樹は500種程度で、残りの7,500種≒90%以上を「広葉樹」が占めていると言う事。つまり、「針葉樹」と「広葉樹」を比較すると、はるかに後者の方が多様性に富んでいると言う事になります。

    また世界の樹木分布を見ると、「針葉樹」とは異なり比較的暖かいエリア(温帯~亜熱帯~熱帯)に多く分布しています。そして誰もが知っている通り、「広葉樹」には「落葉樹」と「常緑樹」がありますが、分布範囲内の比較的寒い地域ででは「落葉樹」が主体、中間地域では「落葉樹」と「常緑樹」の混成、暖かい地域では「常緑樹」が主体となります。ただし、比較的暖かいエリアに自生する「広葉樹」にも一部「落葉樹」があります。「チーク」「サルスベリ」など。これは乾季に葉を落とすためとされています。

    このような地域変化に合わせ、学術的には広葉樹林帯を以下のように分類しています。

    *落葉広葉樹林帯・・・「広葉樹」の生息地域の中の、比較的寒いエリア。

    *硬葉樹林帯・・・地中海沿岸など。夏はかなり乾燥するがそれでも葉を落とさない「常緑樹」で構成される樹林帯。代表的樹種は「オリーブ」「コルクガシ」「イナゴマメ」など。

    *照葉樹林帯・・・温帯エリアだが比較的暖かい地域に多い。日本の主要な樹林帯(主に西日本)の一つでもある。比較的肉厚で艶のある葉を持つ樹木主体で、温暖かつ湿気の多い地域に出現。従って「硬葉樹林帯」と対をなす。

    *熱帯雨林帯・・・熱帯・亜熱帯の多雨地域に広がる広葉常緑樹林帯。地球規模で見ても広大かつ重要な役割を持つ樹林帯。しかしその破壊が深刻化している事は周知のとおり。

    「ブナ」:日本を代表する「落葉広葉樹」の一つ。
    「ブナ」:日本を代表する「落葉広葉樹」の一つ。
  • 「木」語り 連載第4回

    第一章:「木」ってなんだ?

    3:「針葉樹」とは?

    「木」は「針葉樹」≒「裸子植物」と「広葉樹」≒「被子植物」に大別されます。このコーナーではその中の「針葉樹」について検証します。

    最初にこれまでの確認。「針葉樹」とはその名が示す通り、針のように細長い葉を持ち、「裸子植物」であり、2~1.5億年前に地上に表れた樹木群の総称と言う事になります。

    また比較的広がりが少なく、「ソテツ」「イチョウ」のグループ(綱・目)、「マツ」のグループ(同)、「イチイ」のグループ(同)に大別されます(ただし、分類方法により多少異なる)。

    ただ、「ソテツ」「イチョウ」のグループには「ソテツ」「イチョウ」、「イチイ」のグループは「イチイ」しかなく、他の「針葉樹」の殆どが「マツ」のグループと言う事になります。要するに私達が目にする「針葉樹」は、「ソテツ」「イチョウ(この分類法ではイチョウも針葉樹扱い)」を除き、全て「マツ」の仲間と言う事になります。

    さらに、「針葉樹」の主力となる「マツ」のグループ(マツ綱・マツ目)は「マキ科」「マツ科」「ヒノキ科」「スギ科」「ナンヨウスギ科」の6科に分けられます。

    さらに、「針葉樹」は約50属・500種があり、このように列記すると結構種類が多いように感じます。けれども、実は一般的に樹木扱いされる樹種は8,000種を超えており、「針葉樹」はその6%程度に過ぎない事が分かります。

    また、近年では「スギ科」を廃して「ヒノキ科」に含める、「ヒノキ科」の中に「スギ亜科」を設けるなどの考え方もあります。

    しかし、以上の「針葉樹」分類に関してはあくまでも現在を対象としたもので、歴史と言う時間軸が無視されています。従って、化石などの状況を加味すると矛盾が出てきます。前記の通り「針葉樹」は2~1.5億年前に登場しますが、そのほとんどが「セコイア」の仲間で、「マツ綱・目」の植物は未だ存在していなかったからです。

    となれば、「セコイア綱・目」が最初にあり、そこから「セコイア科」「マキ科」「マツ科」「ヒノキ科」「スギ科」「ナンヨウスギ科」などの樹木が、5,000万年程前から分化して行ったと考えるべきでしょう。

    ちなみに、「セコイア」の直系とされる「針葉樹」は、気候変動・人類による伐採等により、「セコイア・センペルビレンズ(通称:レッドウッド)」1種のみが米国の西海岸の一部に自生するだけとなっています。

    他にも「セコイア」の名が付く樹木には、同じく米国の「ヨセミテ国立公園」等に自生する「セコイア・デンドロン(通称:ジャイアント・セコイア)」、中国の一部地区に自生する「メタセコイア」などがありますが、なぜか傍系扱いとなっています。

    ちなみに、現在の植物分類で「セコイア・センペルビレンズ」の位置づけは<ヒノキ科セコイア属「セコイア・センペルビレンズ」となっています。

    補足するなら、日本の「スギ」を含めた「スギ科」の樹木は、日本・メキシコ近辺・中国の一部に散見されるだけ。そしていずれも「セコイア」にかなり近い性質を持っており、傍系ではあるが、「セコイア・デンドロン」「メタセコイア」などと共にかなり近い植物だと推定されます。従って、かつて世界中に分布していた「セコイア」の仲間が絶滅の危機に追い込まれ、そのわずかな生き残りが「スギ科」の植物として、散見されるようになった。そう考えるのが順当では無いでしょうか?

    いずれにせよ、「セコイア」と「スギ科」の樹木については、後項で詳述する事にします。

    その他の特色としては、比較的寒い地域(寒帯・亜寒帯)に大半が分布・「常緑樹」も「落葉樹樹」もあるが、圧倒的に「常緑樹」が多いと言った事を上げることが出来ます。

    「トウヒ」(針葉樹)の葉
    「トウヒ」(針葉樹)の葉