みずきりょう の:エクステリア&ガーデンメモ NO3,080
「世界のガーデン」第八章:「風景式(イギリス式)庭園」
第63回:「カールス・ハワード」と庭園
発祥の地イギリスの「風景式(イギリス式)庭園」。今回は「カールス・ハワード」を取り上げます。
「カールス・ハワード」はイングランドのヨークシャー地方にある「ステートリー・ホーム」です(注:イギリスの農村部にあり、貴族などの住居として建てられた建造物を「カントリー・ハウス」と呼び、その中で現在も私有されているものを「ステートリー・ホーム」と言う)。しかも、<イギリスでも最も壮麗な建造物>とも称され、現在も人気の観光スポットとなっています。また、「カールス城」と称されることも良くありますが、城郭として使われたことは無くこの呼び方は正しくありません。
歴史を辿ると、1,699~1,712年にかけて3代目のカーライル伯爵「チャールズ・ハワード」の命により、上流階級で後に著名な建築家となる「ジョン・ヴァンブラ」が設計を担当しました。実はこれが彼の事実上の処女作でもあり、この作品で評価が高まったと言う事。ただし、当時の設計図では、西棟も描かれていましたが、未着工のままとなりました。西棟は時を経て、18世紀に建設され現在に至っていますが、「ジョン・ヴァンブラ」の設計とは異なり、新古典様式と称される建築様式に変更されています。残念なことに「カールス・ハワード」は1,940年に火災により大半が焼失しましたが、殆どが再建され、現在我々が見る建造物は再建されたものだと言う事です。
「カールス・ハワード」のもう1つの特色は、広大な敷地と複数の庭園を有する点。邸宅の背後には幾何学式の庭園が配されており、おそらく創建当初に造られたもので、まだ「風景式(イギリス式)庭園」が評価される前に完成したのでしょう。さらに、建物を2つの池が囲みそこには庭園広がっており、この部分は少し時代を経て創られた「風景式(イギリス式)庭園」となっています。さらに、公園・その中の植物園へと続き、植物園は「キュー・アット・カールス・ハワード」と称され、イギリス王立の「キューガーデン」と「カールス・ハワード」との共同経営。そして、別に入場口も設けられ、植物園だけを楽しむことも出来ます。同植物園だけでも敷地は514,000㎡あり、それを内包した「カールス・ハワード」がいかに巨大か想像に難くないでしょう。
なお、1,600年代以前に造られたような古い建造物の場合は、幾何学式の庭園が最初に造られ、後に「風景式」庭園が追加される、あるいは部分的に改装される事により、両タイプの庭が併存していつケースが良くあります。
「キュー・アット・カールス・ハワード」植物園は1,975年の創設で、イギリスでの植物標本保管量は最大との事。勿論、イングリッシュガーデンの国イギリスは、世界NO1クラスの植物収集国で、そこでの収集量一番と言う事は、世界一との言っても過言ではありません。