• 「木」語り 連載第10回

    (スポットライト①) 世界の注目を集める「コスタリカ」

     「コスタリカ共和国」は中米と言う政治的に極めて難しい舵取りが求められ地域にあり、現在もコカインの一大消費地になっているなど、様々な悩みを抱えています。またアメリカ合衆国との関連が深まるのと共に、コーヒープランテーションなどの影響で「熱帯雨林」などの自然破壊も進行して行きました。

    元々自然豊かな国で、国土の95%が森で覆われ、地球上の全生物の5%が生息していると言われていたほど。しかし自然破壊が進行し一時は森林面積が同40%にまで低下しました。つまり短期間のうちに自国の森の半分以上が消失してしまったと言う次第。

    「コスタリカ」は総面積約510万ha(世界第125位)・人口約500万人の小国で、豊かと思われた自然も破壊が始まるとあっという間に最悪の状況に至ってしまったと言う事でしょう。

    しかし元々民度の極めて高い国家と言われており、周辺国に先駆け「熱帯雨林」の保全に動き出します。森との共存を図ったプランテーションへの切り替え。自分の所有地をあえて熱帯雨林に戻してしまうと言う試み。等々。

    結果は、自然豊かな国に少し戻ったがより貧しく・・・ではなく、逆に所得アップする人たちが増え、経済的にもプラス効果を生み出しました。豊かな自然が魅力となり<世界有数のエコツアーの国>として知られるようになり、観光収入が大幅に増えたからです。勿論それと並行して心の豊かさも!

    特に有名な自然産物が、熱帯に住む煌びやかな鳥たち。中でも世界一美しいと形容される「ケツァール」は、一時期その姿を殆ど見る事が出来なくなっていましたが、自然保護が進むとともに生息数が回復し、エコツアー最大の目玉となっています。

     勿論道半ばであり、また短期的にはコロナの影響も受けました。しかし、この悩み多き小国の勇敢なチャレンジは、「熱帯雨林」問題に一石を投じてくれたことは間違いの無い事実。頑張れ「コスタリカ」! そして我々も今できる事を!

    世界一美しい鳥?「ケツァール」

    「ラ・アミスター国立公園」内の「リオ・サベグレ川」

  • 「木」語り 連載第9回

    第二章:世界の森林分布

    *アマゾン川流域の「熱帯雨林」とその変遷。

    アマゾン川とその流域面積は5.5億haに達しかつてはその殆どが「熱帯雨林」でした。その規模は勿論世界最大。しかし、毎年全面積の0.3~0.4%が消失しています。また、過去にはあまり考えられなかった、大規模火災による焼失も加わり、2,019年の火災ではなんと11%が一気に燃えてしまいました。また過去には殆ど無かった<木の大量枯死>と言った現象も見られるようになっています。明確な研究結果は出ていませんが、地球温暖化による気候変化が何らかの影響を及ぼしている。そう見るのが妥当でしょう。

     なおアマゾンの「熱帯雨林」焼失に関しては、下記のようなデータが公開されています。

    *アマゾンの「熱帯雨林」面積

    〇1,970年・・・約4億ha

    〇1,990年・・・約3億8,000万ha

    〇2,000年・・・約3億6,000万ha

    〇2,010年・・・約3億4,300万ha

    〇2,015年・・・約3億4,100万ha

    〇2,018年・・・約3億3,900万ha

     以上です。

     つまり、1,970~2,018年の50年間弱で6,000万ha・約15%が消失してしまった事になります。しかも、上記データには2,019年の大火災が含まれておらず、このままではアマゾンの「熱帯雨林」が完全に消えてしまう可能性さえあると言わざるを得ません。

     その一方で、同じ中南米エリアの「熱帯雨林」でも、中米の「コスタリカ」では一度農業用などに破壊したエリアを人の手を入れ自然に戻すなどの試みが一定の成功を修め、<観光収入等が増えたことにより、国の経済力・国民の収入アップに繋がった>と言った話も伝わってきています。

     また、同じ「熱帯雨林」を農地に変えるにしても、一定の森林スペースを残しながら人と自然が共存できる開発システムも少しずつ取り入れられるようになっており、まだ微力と言わざるを得ませんが、明日に向けた明るい話題も出てきています。

     既に提示した通り、「熱帯雨林」は中・南米以外では、アジアの熱帯多雨エリア、アフリカ中・西部のわずかに残された多雨エリアなどにも広がっています。ただ、多少の状況差はあれいずれも危機的状況にある事に変わりはありません。加えて、<日本を含む先進国もその破壊に手を貸している>との言う事実をもっと直視する必要があります。

     具体的には、「熱帯雨林」産出木材の無分別な大量使用・油椰子プランテーションへの加担・・・等々。

     ただこれまで破壊に加担してきた事で「熱帯雨林」を持つ国々と一定のパイプが出来ている事もまた事実。そしてこの事実を逆に活かし、率先して保護活動に協力して行く。その中には、他人事では無く、日本国民一人一人の行動も深く関係している。その自覚を持たなければなりません。

    アマゾン川流域の「熱帯雨林」

    アフリカの「熱帯雨林」

  • 「木」語り 連載第8回

    第二章:世界の森林分布

    7:広葉樹林帯の特性

     「広葉樹林帯」に関しては前述のごとく、落葉広葉樹林帯、硬葉樹林帯、照葉樹林帯、熱帯雨林帯等に大別できます。ただし、「針葉樹」と「広葉樹」が入り混じった混成の樹林帯も、温帯エリア主体に存在しています。いずれにせよ「針葉樹林帯」と比較すると、樹種も多く、多様性に富んでいる事が分かります。その一方で、「針葉樹林帯」の「タイガ」のように集約されたものは、「熱帯雨林」に限定され、全体像を単純にとらえる事はかなり困難な状況下にあります。従って、本コーナーでは「熱帯雨林」に限定し検証して行く事にします。

    <「熱帯雨林」の現状と変化>

     「熱帯雨林」とは文字通り、熱帯エリアに広がる「常緑広葉樹」主体の樹林帯の事です。ただ、同じ熱帯でも乾燥地帯では成立せず、年間降水量が2,000㎜以上の高温多雨地区だけに形成されています。

     具体的には、熱帯エリアの中南米・アジア・アフリカの一部に集約して存在(「熱帯雨林」の分布図参照)しており、様々な樹林帯の中でも、CO2の吸収力に特に優れた能力を持ち、酸素の約40%がここで供給されていると言われています。従って、「熱帯雨林」をどう維持して行くかが、地球温暖化問題の極めて重要課題となっている事は周知の通りです。

     その一方で、「熱帯雨林」が存在するエリアの国の大部分が発展途上国であり、様々な協定が結ばれ、維持・管理の強化努力が行われているにもかかわらず、依然として減少・荒廃が続いており、さらなる対策が求められている事もまた偽らざる事実となっています。

     具体的な「熱帯雨林」の荒廃・消失スピードは、毎秒0.5~0.8haにも達するとの研究もあり、良く起点として取り上げられる1,950年~現在(2,020年~2,023年頃)の状況を比較すると、それ以前は世界の陸地面積の約14%(約21億ha)が「熱帯雨林」で占められていたとの事ですが、現在ではその半分以下の約6%(約9億ha・全森林面積の22~23%)にまで減少しています。

     となれば「熱帯雨林」でのCO2吸収≒酸素供給量も、1,950年頃と比較すると半減していると言う事になり、地球温暖化問題の最重要課題の一つとなっている事は火を見るよりも明らかだと言えるでしょう。

     では「熱帯雨林」の消失要因とは。木材利用のための伐採・パーム椰子生産や焼き畑に代表される農地への転換・それに近年では地球温暖化の影響を受けた大規模火災などがその代表的なもの。

     いずれにせよ「熱帯雨林」が消失した熱帯エリアでは、急速に乾燥化が進み、サバンナのような草原地帯どころか、砂漠化する事も珍しくありません。

    それでは、「熱帯雨林」消失例として、南米アマゾン川流域の状況を以下で提示しておきます。

    世界の「熱帯雨林」分布図

    東南アジアの「熱帯雨林」(マレーシア)